IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
クロタニコーポレーション(3168 東証二部)IPO |
震災後の上場第一弾は、公募価格で十分に評価済みとなっている印象 11.8期の業績予想では、対前期比で80-90%程度の増益の見通しと、高い利益伸び率が想定されているものの、業績見通しの詳細については、開示が無く、高い伸びの理由については、明確にはなっていない。 この業績予想に基づく、想定されている公募価格のPERは約7倍強となる。足元の高い利益伸び率をみると、もう少し高い評価も可能かもしれないが、震災後の軟調な地合と、脚光を浴びにくい東証二部からの上場であること等を考慮すると、想定されている公募価格で十分かと思われる。 個別データ(肩は対前期比(%))
クロタニコーポレーション(以下、クロタニ)は、銅を中心とした非鉄金属関連ビジネスとして、インゴットの製造・販売とスクラップの加工・販売を2本柱として事業を展開し、その他、美術工芸品に関する製造販売も行っている。 クロタニの事業では、インゴットとスクラップを同時に取り扱っていることにより、雑多な非鉄金属を一括買いすることが可能となり、通常、インゴット製造のみを行っている場合であれば、その製造に必要なスクラップ原材料のみを仕入れることになるが、クロタニの場合は、あらゆるスクラップを取り扱うことが可能となっている。 インゴットについては、国内外から集荷した銅スクラップ、銅合金スクラップを原材料として配合、溶解し、得意先各社のニーズ、用途に合わせた形状・重量の製品約50品種を生産している。仕入れたスクラップは、製品ごとの要求規格に合致する成分割合になるよう製造し、国内外の販売先(造船メーカー、住宅設備メーカー等)に販売している。 ■中心となる品種 ・ 船舶のスクリュー原材料として用いられる「アルミ青銅」 ・ 水洗金具、止水栓、産業用バルブ等、主に住宅産業向けに販売する「青銅」 スクラップは、国内外の仕入先(スクラップ回収業者、メーカー等)から仕入れた約150品種の非鉄金属スクラップについて選別・プレス等を行い、国内外の販売先(電線メーカー、銅精錬メーカー等)に販売しているほか、自社インゴット製造のための溶解用材料として利用している。 ■中心となる品種 ・ 主に電線、銅板条・銅管、銅箔の各メーカー向けに販売する「純銅スクラップ」 ・ 主に銅精錬メーカー向けに販売する「銅スクラップ」 ・ 主に住宅設備や各種産業バルブ業界向けに販売する「銅合金スクラップ」 ・ アルミメーカー(軽圧、板条、二次合金)やステンレスメーカー向けに販売する「アルミ・ステンレス系スクラップ」 その他の事業としては、モニュメント、記念品、置物、仏像、ジュエリー等、美術工芸品の製造販売と伸銅品等の商品仕入れ・販売を行っている。 |
■10.8期実績 インゴットの販売量は、造船業界の業況悪化により前年同期比8.4%減となったものの、市況環境が良好(円建値ベース前年同期比35.1%増)であったため、売上高は前年同期比13.1%増となった。一方スクラップは、市況環境の良好さに加え、取扱量が前年同期比18.0%増加したことから、売上高は前年同期比68.8%増となった。 地域別では、インゴットは、造船業界の業況悪化により韓国向けが減少したものの、中国、東・東南アジア、ヨーロッパが増加、またスクラップでは、関東圏、中部圏、中国が増加したものの、韓国、東・東南アジア、ヨーロッパは減少した。 以上の結果、売上高は前年同期比37.6%の増収、経常利益・当期純利益では前年同期比倍増以上の増益となった。 表1 品目別販売実績(百万円、前期比%) 10.8期 11.2期 インゴット 21,251 +13.1% 11,233 スクラップ 26,379 +68.8% 15,447 そ の 他 688 -0.6% 325 合 計 48,319 +37.6% 27,005
ストックオプションは無く、ベンチャーキャピタルからの出資もない。既存株主の大部分はロックアップの対象になっており、ロックアップのカバー率も十分に高い状態にある。株式需給面での問題点は、特に見当たらない。 A. 発行済み株式数 7,000千株(単元100株、11.4月に1:1,000株式分割後) B. 公募 972千株(自己株式の処分)、増資によるオーバーアロットメント 310,800株 C. 売出し 1,100千株(売出し元は会社関係者)、既発株のオーバーアロットメント なし D. ストックオプション等の残高総数 0株 E. うち潜在株式に算入する数 0株 F=A+B+E 上場時点の想定発行済み株式数 7,310,800株 【参考】(株数は売り出し考慮前) ベンチャーキャピタルの推定保有株数 0株 既存株主へのロックアップ情報: 会社関係者15名と法人1社に対して90日間。但し、発行価格の1.5倍以上での市中売却は可能。対象株数は6,000株。 目論見書での想定発行価格は1,200円で、この価格に基づく自己株式の処分による手取り概算額は約1,072百万円とされている。別に予定されている第三者割当増資による手取り概算額約344百万円と合わせた使途は、短期借入金の返済に約1,290百万円、本社工場の環境改善のための設備資金に126百万円を充当する予定。
クロタニのウエブサイトには5月9日時点で、投資家向け情報開示のページは設置されていない。 |
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