IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
イー・キャッシュ(3840 マザーズ)IPO |
想定公募価格は、ちょっとやり過ぎの感も 物流関係のトレーサビリティなどで注目を集めているICタグ関連のシステム業態なので、業態としての面白み、成長性は評価できる。 しかし、07.3期の業績見通しでは売上高が対前期比で8割増を見込んでいることに対して、利益面では、顕著な伸びが見込まれておらず、定量的な成長評価はしづらい状況。この状況下では、07.3期見通しベースのEPS約2千円に対して、PER約60〜70倍で見込まれている公募価格は、行き過ぎ感がある。少なくとも目論見書からは、想定公募価格までの高い評価はしかねる。 連結データ(肩は対前期比(%)、05.3期以前は個別)
イー・キャッシュのグループは、イー・キャッシュと在英の連結子会社1社から構成されており、RFID(ICチップ)事業と、決済代行事業を軸とした技術・サービスを提供している。 北米・欧州の大手小売チェーンの店舗・物流センターで利用されているICタグ・ICチップや、宅配便・海運大手の国際貨物で取り扱われているもの、航空手荷物での利用、国内の家電チェーンでの物流システムに利用されているものなど、物流分野で利用されているICタグ・ICチップについて、イー・キャッシュでは、ミドルウエアの開発受託を中核として、コンサルティングやシステムインテグレーションなどの事業を行っている。 イー・キャッシュグループで開発したミドルウエアは、ICカード・ICタグの情報を読み書きするリーダ・ライタと、読み取った情報を活用するソフトウエアである業務アプリケーションとを容易に接続し、規格が異なるリーダ・ライタでも、このミドルウエアを活用することで、業務アプリケーションとの間でスムーズな通信ができるようになる。 イー・キャッシュグループでは、ソフトウエア開発のうち仕様設計、品質管理などの工程は自社内で行い、プログラミング作業などの工程を外注している。また、海外子会社ではRFID分野でのマーケティングリサーチを行い、イー・キャッシュ本体に対してサービスを提供している。 また、 イー・キャッシュグループでは、電子商取引を行うEC事業者に対するクレジットカード決済処理サービスの提供や、クレジットカード決済に関わるクレジットカード会社との加盟店契約代行、売上代金の収納代行業務を行う決済代行事業を行っている。 |
06.3期は、RFID事業で、トッパン・フォームズからミドルウエアの開発を受託して売上高は約395百万円となった。決済代行事業では、105件の加盟店の新規申込みがあり、うち81件が決算期内に稼動を開始した。06.3末時点の稼動加盟店数は263件、売上高は40百万円。 06.9中間期に前期に引き続いて、RFID事業で携帯電話端末等に搭載される電子部品向けミドルウエア・ハードウエアの開発・設計をトッパン・フォームズから受託したことや、同社への人材派遣等の業務を受託したことで、売上高は143百万円。 決済代行事業では、期中に88件の加盟店の新規申込みがあり、うち59件が中間期末までに稼動を開始、9月末時点での稼動店舗数は298件、売上高は16百万円となった。 イー・キャッシュの大株主でもあるトッパン・フォームズ向けの売上の全販売実績に占めるシェアは、06.3期、06.9中間期ともに6割を超えている。ここまでは、同社向けの売上によって、業績が急成長したことになるが、その反面、同社からの受注が今後減少するようなことがあれば、イー・キャッシュの業績に致命的な影響を与える可能性がある。得意先を増やすことがイー・キャッシュの今後の課題であり、ここからの業績が伸びるかどうかも、ここにかかっていると言える。 07.3期見通しでは、売上高は対前期比で倍増に近い伸びを想定しているが、利益ベースでの対前期伸び率は、売上高の比率以下に留まっている点が、課題。 第三四半期までの実績の進捗率からみると、通期の見通しは過大に見えるが、システム関連の業態でよくある季節要因とみる。
ストックオプションとベンチャーキャピタルの保有株数は一見すると多いのだが、ストックオプションのうち、上場直後に行使できるものはロックアップ対象になっている。すぐには行使できないストックオプションには、行使時期によって制限がかけられており、全数をすぐに行使することが出来ない仕組みになっている。 また、ベンチャーキャピタルの保有株の過半は、ロックアップ対象。上場後の半年間は、株式需給が極端に悪化することはないと見られる。 A. 発行済み株式数 24,800株(06.12に1:10株式分割後) B. 公募 4,000株、増資によるオーバーアロットメント 840株 C. 売出し 1,600株(売出し元はVC500株、残は会社関係者3名)、既発株のオーバーアロットメント なし D. ストックオプション等の残高総数 11,400株 E. うち潜在株式に算入する数 9,000株 F=A+B+E 上場時点の想定発行済み株式数 38,640株 【参考】(株数は売り出し考慮前) ベンチャーキャピタルの推定保有株数 9,500株(うち500株は売り出し、残のうち6,500株は売り出し後のロックアップ対象) 既存株主へのロックアップ情報:売り出し人を対象に180日間。対象株数はストックオプション9,000株を含めて24,900株。05.5月と7月に実施した第三者割当増資計680株は上場後6ヶ月の保有確約の対象。 表1 ストックオプションの未行使残高の状況 総会決議 対象株数 行使価格 行使期間 02年8月 9,000株 5千円 04年8月〜09年8月 06年2月 1,080株 22千円 08年2月〜16年2月(行使できる量は時期によって制限あり) 06年3月 1,170株 22千円 08年3月〜16年3月(同上) 06年3月 150株 22千円 08年3月〜16年3月(同上) 目論見書での想定公募価格は121〜147千円で、この平均価格134千円に基づく公募によるイー・キャッシュの手取り概算額は約466百万円とされている。第三者割当増資の手取り額約103百万円と合わせた資金使途は、研究開発用器具の購入、決済システムの改修・増強、オフィス拡張に伴う設備資金に115百万円、残額を研究開発資金に充当する予定。
イー・キャッシュのウエブサイトには、投資家向け情報開示のページが既に設置されている。現在掲載されているコンテンツは、マネジメント・メッセージと財務ハイライトとなっており、まずは平均的な開示レベル。 トップページの目次が、日本語ページでも全て英文タイトルになっている点は、不親切な感がある。 |
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本資料における個別銘柄に関する注意事項 EPS・BPS・株主資本比率の計算の元となる、純資産・総資産・株主資本は、各決算期末時点の会社公表数値を用いている。発行済株式数は、自己保有株を含まない。また、株式分割・公募増資・自己株買い入れ等を必要に応じて過年度を含めて修正している場合がある。 一株当りの配当は、株式分割・公募増資・自己株買い入れ等を必要に応じて過年度を含めて修正している場合がある。 その他の重要な注意事項 本資料は、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資対象となる有価証券の価値や投資から得られる収入は、証券価格の変動のほか、発行体の経営・財務状況の変化、金利や為替相場の変動やその他の要因によって変化する可能性があり、投資額を下回る場合があります。また過去の実績は必ずしも将来の成果を示唆するものではありません。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。 本資料は、当サイトが信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成されたものですが、その情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、本資料に記された意見や予測等は、資料作成時点での当サイトの判断であり、今後予告なしに変更されることがあります。本資料の著作権は当サイトに帰属し、その目的のいかんを問わず無断で本資料を複写・複製・配布することを禁じます。 |
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