3840イー・キャッシュIPO=新規公開株式の上場目論見書に基づいた、銘柄・企業分析、初値予想・適正株価水準の想定
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イー・キャッシュ(3840 マザーズ)IPO

公募価格バリュエーションと初値予想等

セクター:情報通信業

想定公募価格は、ちょっとやり過ぎの感も
 物流関係のトレーサビリティなどで注目を集めているICタグ関連のシステム業態なので、業態としての面白み、成長性は評価できる。

しかし、07.3期の業績見通しでは売上高が対前期比で8割増を見込んでいることに対して、利益面では、顕著な伸びが見込まれておらず、定量的な成長評価はしづらい状況。この状況下では、07.3期見通しベースのEPS約2千円に対して、PER約60〜70倍で見込まれている公募価格は、行き過ぎ感がある。少なくとも目論見書からは、想定公募価格までの高い評価はしかねる。


連結データ(肩は対前期比(%)、05.3期以前は個別)
決算期 05/3 06/3 06/12 3Q 07/3予
売上高(百万円)
221
97.5%
437

366
80.7%
789
営業利益(百万円)
39
173.6%
107

43
60.5%
172
経常利益(百万円)
39
167.9%
105

38
31.4%
138
当期利益(百万円)
34
105.2%
69

20
8.2%
75
総資産(百万円)
純資産(百万円)
175
47
367
216
508
237
--
--
株主資本比率(%) 26.7% 58.9% 46.6% --
ROA(%、経常利益)
ROE(%、当期利益)
22.4%
72.4%
28.6%
32.1%
7.5%
8.4%
--
--
発行済株式数 68.64 (修正後、千株)
EPS(円/株)
BPS(円/株)
874
1,208
1,794
5,595
516
6,127
1,941
--
配当(円/株) -- -- -- --

事業概要
RFID(ICチップ)事業、決済代行事業
 イー・キャッシュのグループは、イー・キャッシュと在英の連結子会社1社から構成されており、RFID(ICチップ)事業と、決済代行事業を軸とした技術・サービスを提供している。

 北米・欧州の大手小売チェーンの店舗・物流センターで利用されているICタグ・ICチップや、宅配便・海運大手の国際貨物で取り扱われているもの、航空手荷物での利用、国内の家電チェーンでの物流システムに利用されているものなど、物流分野で利用されているICタグ・ICチップについて、イー・キャッシュでは、ミドルウエアの開発受託を中核として、コンサルティングやシステムインテグレーションなどの事業を行っている。

 イー・キャッシュグループで開発したミドルウエアは、ICカード・ICタグの情報を読み書きするリーダ・ライタと、読み取った情報を活用するソフトウエアである業務アプリケーションとを容易に接続し、規格が異なるリーダ・ライタでも、このミドルウエアを活用することで、業務アプリケーションとの間でスムーズな通信ができるようになる。

 イー・キャッシュグループでは、ソフトウエア開発のうち仕様設計、品質管理などの工程は自社内で行い、プログラミング作業などの工程を外注している。また、海外子会社ではRFID分野でのマーケティングリサーチを行い、イー・キャッシュ本体に対してサービスを提供している。

 また、 イー・キャッシュグループでは、電子商取引を行うEC事業者に対するクレジットカード決済処理サービスの提供や、クレジットカード決済に関わるクレジットカード会社との加盟店契約代行、売上代金の収納代行業務を行う決済代行事業を行っている。


収支の状況
足元の業績は、大株主でもあるトッパン・フォームズからの受注次第
 06.3期は、RFID事業で、トッパン・フォームズからミドルウエアの開発を受託して売上高は約395百万円となった。決済代行事業では、105件の加盟店の新規申込みがあり、うち81件が決算期内に稼動を開始した。06.3末時点の稼動加盟店数は263件、売上高は40百万円。

 06.9中間期に前期に引き続いて、RFID事業で携帯電話端末等に搭載される電子部品向けミドルウエア・ハードウエアの開発・設計をトッパン・フォームズから受託したことや、同社への人材派遣等の業務を受託したことで、売上高は143百万円。

 決済代行事業では、期中に88件の加盟店の新規申込みがあり、うち59件が中間期末までに稼動を開始、9月末時点での稼動店舗数は298件、売上高は16百万円となった。

 イー・キャッシュの大株主でもあるトッパン・フォームズ向けの売上の全販売実績に占めるシェアは、06.3期、06.9中間期ともに6割を超えている。ここまでは、同社向けの売上によって、業績が急成長したことになるが、その反面、同社からの受注が今後減少するようなことがあれば、イー・キャッシュの業績に致命的な影響を与える可能性がある。得意先を増やすことがイー・キャッシュの今後の課題であり、ここからの業績が伸びるかどうかも、ここにかかっていると言える。

 07.3期見通しでは、売上高は対前期比で倍増に近い伸びを想定しているが、利益ベースでの対前期伸び率は、売上高の比率以下に留まっている点が、課題。

第三四半期までの実績の進捗率からみると、通期の見通しは過大に見えるが、システム関連の業態でよくある季節要因とみる。

株式の状況
ストックオプションとVC保有株の大部分は、当面の行使は不可
 ストックオプションとベンチャーキャピタルの保有株数は一見すると多いのだが、ストックオプションのうち、上場直後に行使できるものはロックアップ対象になっている。すぐには行使できないストックオプションには、行使時期によって制限がかけられており、全数をすぐに行使することが出来ない仕組みになっている。

また、ベンチャーキャピタルの保有株の過半は、ロックアップ対象。上場後の半年間は、株式需給が極端に悪化することはないと見られる。

A. 発行済み株式数 24,800株(06.12に1:10株式分割後)
B. 公募 4,000株、増資によるオーバーアロットメント 840株
C. 売出し 1,600株(売出し元はVC500株、残は会社関係者3名)、既発株のオーバーアロットメント なし
D. ストックオプション等の残高総数 11,400株
 E. うち潜在株式に算入する数 9,000株
F=A+B+E 上場時点の想定発行済み株式数 38,640株

【参考】(株数は売り出し考慮前)
ベンチャーキャピタルの推定保有株数 9,500株(うち500株は売り出し、残のうち6,500株は売り出し後のロックアップ対象)
既存株主へのロックアップ情報:売り出し人を対象に180日間。対象株数はストックオプション9,000株を含めて24,900株。05.5月と7月に実施した第三者割当増資計680株は上場後6ヶ月の保有確約の対象。

表1 ストックオプションの未行使残高の状況
総会決議  対象株数 行使価格 行使期間
02年8月 9,000株 5千円 04年8月〜09年8月
06年2月 1,080株 22千円 08年2月〜16年2月(行使できる量は時期によって制限あり)
06年3月 1,170株 22千円 08年3月〜16年3月(同上)
06年3月  150株 22千円 08年3月〜16年3月(同上)

 目論見書での想定公募価格は121〜147千円で、この平均価格134千円に基づく公募によるイー・キャッシュの手取り概算額は約466百万円とされている。第三者割当増資の手取り額約103百万円と合わせた資金使途は、研究開発用器具の購入、決済システムの改修・増強、オフィス拡張に伴う設備資金に115百万円、残額を研究開発資金に充当する予定。

情報開示の状況
開示あり
 イー・キャッシュのウエブサイトには、投資家向け情報開示のページが既に設置されている。現在掲載されているコンテンツは、マネジメント・メッセージと財務ハイライトとなっており、まずは平均的な開示レベル。

 トップページの目次が、日本語ページでも全て英文タイトルになっている点は、不親切な感がある。

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