IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
エイチアンドエフ(6163 JASDAQ)IPO |
日立造船にとってはメリットの大きい上場案件 自動車業界を主なマーケットとしたプレス機械等の製造・販売・アフターサービスを行っている。業績自体は自動車産業が好調なことを受けて、右肩上がりを継続しており、今期の会社発表業績予想でも、対前期比で高い増収増益率が見込まれている。 会社発表の今期業績予想ベースのEPSは約100円で、想定されている公募価格のPERは約10倍弱の水準。 一方で、日立造船との親子上場となる点が、ネガティブポイント。売り出しによって日立造船は売却益の計上が見込め、上場によって最もメリットを受けるのは日立造船となる。来期以降の業績は自動車業界の動向次第という状況下で、新規株主にとってはPERでの評価は出来るとはいえ、これといったメリットが感じられない。 連結データ(肩は対前期比(%))
エイチアンドエフは日立造船グループに属している。エイチアンドエフグループは、エイチアンドエフと子会社5社で構成されており、プレス機械、FAシステム製品の製造・販売と、これらの製品の修理・改造・点検・移設等のアフターサービス工事を主な事業としている。 プレス機械では、機械プレスや油圧プレスを取り扱っている。FAシステム製品では、ロボット式搬送装置やレーザー溶接装置などのプレス周辺自動化装置や、プレス生産管理システムやデジタル圧力設定気などの電子制御機器を取り扱っている。 |
07.3期の会社発表業績見通しでは、前期に比べて増収増益となる見通し。売上高では、主要顧客である自動車業界の業績が好調であることを背景に、受注残高が積みあがっている模様で、これが反映されている。コスト面でも、NC工作機の導入による生産効率向上を織り込んでいるとのこと。 表2に見るように、06年9月末までの受注残は、漸増傾向にある。07.3期の業績見通しの達成可能性は十分高いとみられる。 表1 品目別06.3期販売実績(百万円、前期比%) プレス機械 8,773 +0.3% FAシステム製品 4,400 +4.9% アフターサービス工事 3,291 +23.0% 合計 16,465 +5.4% 表2 受注残高の推移(百万円) 05.3末 06.3末 06.9末 プレス機械 9,930 11,239 10,892 FAシステム製品 3,171 4,369 5,102 アフターサービス工事1,165 1,481 2,226 合計 14,268 17,090 18,221
06年10月時点のエイチアンドエフの発行済み株式数は8,850千株(取引単位は100株)で、上場にあたっての公募が1,000千株、売出しが1,200千株(売り出し元は日立造船)、オーバーアロットメントによる売出しが300千株予定されている。ストックオプション等の希薄化効果は無い。以上から、上場時点の想定発行済み株式数は、9,850千株とした。 目論見書での想定発行価格は980円で、この価格に基づくエイチアンドエフの公募による手取り概算額は約891百万円とされている。資金使途は、NC床上型横中ぐり盤の購入や、本社プレス工場の建屋改築費用等の設備投資資金に充当する予定。 売り出し人である日立造船には180日間のロックアップが付されている。但し、発行価格の2倍以上での市場売却は可能。日立造船の保有株式数は売り出し考慮前で6,622千株なので、売り出しとオーバーアロットメントを考慮した上場後の保有数は、5,122千株となる。 公募増資後の発行済み株式数9,850千株に対する日立造船のシェアは上場直後の時点で52%となる。日立造船がエイチアンドエフへの影響力を残すことを前提とすれば、売り出し以上に保有株を売却することにはリスクがある。ロックアップの有無に関わらず、親会社からの追加売却の可能性は低いだろう。
エイチアンドエフのウエブサイトには、投資家向け情報開示のページが既に設置されている。現在掲載されているコンテンツは、マネジメントメッセージと、財務ハイライト、業績見通しなどとなっている。上場前段階としては、特に問題のない開示水準。 |
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