IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
2007年8月 ブルドックソースの防衛策に対する最高裁の判断 |
投資ファンドであるスティール・パートナーズ(SP)による株式公開買付けに対抗するためにブルドックソース(BS)がとった防衛策に対して、SPがその差止めの仮処分を求めた事案について、2007年8月7日に最高裁は仮処分を認めない東京高裁決定を維持する決定をした。
2. SP関係者以外の新株予約権者は、行使可能期間である2007年9月中に、新株予約権1個につき1円を払い込めば株式1株を取得できる。 3. ブルドックソースは新株予約権1個につき株式1株を交付することにより、株主の意思にかかわらず新株予約権を強制的に回収し、消却できる。この場合SP関係者には株式でなく現金396円を交付する。 4. 新株予約権を譲渡するには、ブルドックソース取締役会の承認を要する。 この防衛策は、SP関係者以外の新株予約権を株式に変えることによりその議決権比率を4倍にし、それによりSP関係者の議決権比率を低下させることを目的とする。 この中で用いられている、1. 新株予約権の無償割当て、2. 「取得条項付」新株予約権は、2006年5月1日に施行された会社法により初めて認められたもの。
1. SP関係者のみ行使できない新株予約権の無償割当てが、株主平等原則に反しないか、 2. 新株予約権無償割当てが、著しく不公正な方法により行われた場合に該当しないか、 が争われた。 最高裁判所の判断を整理すると、次のような内容。 ■本件新株予約権無償割当ては株主平等原則に反しないか ・ 株主に無償割当てされる新株予約権の内容が平等でなくても、株式の内容等に直接関係するものではないから、直ちに株主平等の原則に反するということはできない。 ・ 株主平等の原則の趣旨は、新株予約権無償割当ての場合についても及ぶが、本件新株予約権が全部行使されればSPのみ議決権比率が大きく下がるので、株主平等原則が問題となる。株主平等原則は、個々の株主の利益を保護するためのものだが、個々の株主の利益は、一般的には、会社の存立、発展なしには考えられないものであるから、特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の存立、発展が阻害されるおそれが生ずるなど、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合(A)には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても、当該取扱いが衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り(B)、直ちに同原則の趣旨に反するとはいえない。 ・ 特定の株主による経営支配権の取得に伴い、会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるか否かについては、最終的には、会社の利益の帰属主体である株主自身により判断されるべきものであり、株主総会の手続が違法である等特別の事情がない限り、裁判所は判断しない。 【結論】 Aについては、議決権総数の約83.4%の賛成を得て可決されていること、Bについては、SP関係者以外のほとんどの既存株主が賛同していること、SP関係者には相当の現金が支払われることから、いずれも要件を満たしており、株主平等原則の趣旨に反しないとした。 ■新株予約権無償割当てが著しく不公正な方法により行われる場合に該当するか ・ 防衛策は、平時に定めておくことが、株主、投資家、買収者等の関係者の予見可能性を高めるが、経営支配権の取得を目的とする買収が開始された時点において防衛策を講ずることが許容されないものではない。 ・ 専ら現経営層の経営支配権を維持する目的である場合には、その新株予約権無償割当ては原則として著しく不公正な方法に当たる。 【結論】 本件は、突然公開買付けが実行されるという緊急の事態に対処するための措置であること、SP関係者に割り当てられた新株予約権に対してはその価値に見合う対価が支払われることから、著しく不公正な方法によるものということはできない。 また、本件は、専ら現経営層の経営支配権維持を目的とするものではない。
東京高裁のいう濫用的買収者か否かの判断はケース・バイ・ケースであるから、予測可能性が低く、企業が防衛策を設ける際のよりどころとはなりがたかったが、最高裁の決定は株主総会で承認されている防衛策は、原則として適法であるとしており、防衛策の適法性についての予測可能性は高まったといえる。
しかし、以下の通り、理論的に詰めきれていない点、基準が不明確な点が残る。 1. 普通決議か特別決議か 最高裁は、株主総会決議により防衛策を導入することを要求しているが、普通決議で足りるのか、特別決議まで必要なのかが明らかではない。 2. 対価について 最高裁は、買収者に支払う対価について、SPが自ら決定した公開買付価格に基づき算定されたということを理由に、「本件新株予約権の価値に見合うもの」としているが、買収者に支払う対価と公開買付けの価格との間に乖離がある場合にはどのように考えるのか不明。 3. 平時導入の場合の要件 本件は有事に防衛策を導入する事例であったが、平時に防衛策を導入する場合は、いかなる要件で認められるのかは不明。 防衛策を平時に導入する場合は、買収者は防衛策を考慮した上で、買収をするか否かの判断をすることができ、不測の損害を被るということはない。この点からは、平時に防衛策を導入するほうが、有事に導入するよりも低いハードルで認められやすいといえる。 しかし、他方で防衛の対象となる敵対的買収が特定していないため、濫用の危険が高まる。この点からは、平時に防衛策を導入する場合には、取締役の濫用防止の仕組みなどの制度設計が必要とされる可能性もある。 |
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