新規上場の目論見書に基づいた、IPO=新規公開株式の銘柄・企業分析、初値予想・適正株価水準の想定
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ファンダメンタルズ分析の要諦 >> 注記


 普通、決算短信を読む人でも、「注記」まで読み込む人は余り多くないと思います。

 しかし、決算短信に記載されている財務諸表は、全てこの注記に書かれた会計方針に基づいて集計されたものです。決算の考え方を把握せずして、決算の数字だけ追いかけても、意味がない場合があります。

 また、会計基準は基本的に統一されているとはいえ、細部については会社ごとに会計方針が異なる結果、決算状況に影響を与えていることがあります。

 更には、会計基準を合法的な範囲で自社に有利に取扱い、見た目の決算を着飾ったものにすることだって可能です。

 よくよく注記を読んでいけば、その会社の本当の姿が見えてくることがあります。管理人の場合、短信の中で最も注意深く、時間をかけて読んでいる部分です。

重要な会計方針の変更がないか

 最もありえるケースとしては、減価償却費の計上方法を定率法から定額法に変更するというワザです。

 これをすることで、計上方法を変更した決算期の費用計上額を意図的に減らすことが可能だからです。もっとも、一度変更すると、元に戻せないことになっていますので、一回限りの手段です。

 こういった方法をとる企業の場合、見た目の決算書の記載されている利益が大きくても、なんらかの問題を抱えていると考えたほうがよいでしょう。企業の危険度を見分ける一つのポイントです。

 同様の危険度チェック項目は、他にもあります。

 在庫評価方法の変更(総平均法から後入れ先出し法への変更など)や、退職給付債務関連では、一時的な「益出し」操作をすることが理論上可能です。この点については、項目を立てて後述します。
特に大きな変化があった項目については、その差異の発生理由を、他のページなどから調べます。

税効果会計による法人税等への影響がないか

 当期未処理損失を資本の部に残している会社は、法人税の支払いが基本的にありません。

 立ち上げ当初の会社で、立ち上げ段階での累積損失がまだ解消されていない会社が新規上場するケースがありますが、このような場合には、見た目の税引き後当期利益が大きく計上され、実力利益を誤解してしまう可能性があります。

 実際には、累積損失が一掃された段階で、約40%近くが法人税等として差し引かれ、税後利益はそれまでの約6割に低下します。適用されている税率がどうなっているかは、通常注記部分に記載されていますので、そこから確認が可能です。

 似たケースとしては、売上高が小さい会社の場合、消費税の非課税事業者に該当し、消費税分の支払いが猶予される場合があります。この場合は、営業費用が少なく計上されていることになり、逆に営業利益以下の項目が若干実力よりも大きく計上されることになります。

 通常は、上場会社でこれに該当するケースは極めてまれですが、たまにありえます。ただ、利益額に対する減免効果は、普通は消費税よりも法人税のほうが大きくなります。

 更に複雑なケースでは、BS上の資本の部には、欠損金が表示されていないにもかかわらず、法人税が実質支払われていないケースもあります。これは、商法上の欠損としては認められていないけれども、税務上の欠損がまだ残っている、という場合です。

減損損失の計上実績と予定

 ポイントは、当決算期にどれだけ計上予定で、翌決算期以降にどれぐらい計上する可能性があるか、を判断することにあります。

 しかし、実際問題としては、決算書から、減損損失の今後の計上額を想定することは、現状の開示水準ではデータ不足のため、わからないケースがほとんどです。まれに、リスク情報として、減損の今後の見積もり額を記載してくれる企業もありますが、現状では例外的ケースです。

 期中に突然、減損損失を計上することにしたので当期の予想利益を大幅に下方修正する、といったケースが多くあるので、この項目が事前に推測出来れば非常に安心なのですが、現在の開示規程からは、企業の善意ある情報開示に期待するしかありません。

退職給付債務の処理方法

 以下は、とある会社の2005年3月期決算の注記から抜粋したものです。A社とB社、どちらが財務面で健全でしょうか?

  A社 B社
割引率 2.0% 2.0%
期待運用収益率 0.5% 4.0%
過去勤務債務の額の処理年数 3年 10年
数理計算上の差異の処理年数 3年 10年

答えはA社になります。理由は以下の2点です。

 一つ目は、期待運用収益率が低いことです。この率は年金資産の運用・給付の前提としている想定運用利回りですから、A社は、低めに設定しても給付できるだけの年金資産を持っていることを、この期待運用収益率の低さで証明しています。

 B社の場合、毎年年金資産を4%で運用しないと、退職者に約束した年金を支給できないわけです。それだけ年金資産の積立額が小さく、ギャンブル的な運用をしなければならない状態になっていると言えます。

 二つ目は、過去勤務債務・数理計算上の差異の処理年数の違いです。
 これは10年に設定していたとしても、年金給付には直接悪影響はありません。しかし、定額での費用処理の年数を示しますから、トータル処理額が同じであれば、年数が小さい会社のほうが単年度の費用計上額は大きくなります。

 従って、突発的に年金債務で費用が膨れ上がる可能性があることになります。それでも年限を短く設定するということは、費用の増加があっても全体収支で吸収する自信がある、または全体の収支から見て年金費用が大きくはない、ということを意味しています。

 つまり、ふところが大きくないと、短い年限で処理することは困難ですから、逆に言えば、短い処理年限は、決算に対する自信とふところの大きさを示している、ということになります。

 退職給付債務は、現在の会計基準では、PLにもBSにも全貌が現れない項目ですが、金額的に大きいですから、ちょっと前提数値を変更するだけで、大きく利益額に影響をします。この部分を見れば、その会社の経営が苦しいかどうかがわかるケースがあるわけです。



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