新規上場の目論見書に基づいた、IPO=新規公開株式の銘柄・企業分析、初値予想・適正株価水準の想定
IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research
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経営学にみるロング・ショートの有効性


 発行から1年ほどたつが、神戸大学大学院 三品助教授の著書に「戦略不全の論理〜慢性的な低収益の病からどう抜け出すか」(東洋経済 2,730円税込み)がある。

 日本企業は、売上の拡大が至上命題となり、収益性をおろそかにした結果、売上高が伸びれば伸びるほど、売上高に対する利益率が低下し、企業自体の利益成長は鈍化する、という事実をデータ分析を元にして、明快に指摘したなかなかの名著である。

 この中で、三品氏は、「同じ業種に属する企業は、オーナー社長などがいて明確・迅速に意思決定できる場合を除くと、事業戦略の方向性は、どうしても似通ったものになりがちである。その結果として、同じ業態であれば、企業業績の方向はほぼ同一となり、企業間での格差は見られない」と指摘している。

 どういうことかと言うと、1970年から2000年までの、それぞれの企業の売上高営業利益率の推移を、同業種の企業ごとにグラフにプロットする。同著では、「マッチング・ペア分析」として、日本信号と京三製作所、日本電池とYUASAと古河電池、岩崎通信機とNECフロンティア、といった具合に比較していく。そうすると、確かに、比較した企業は、ほとんど比較の意味も無く、利益率の折れ線グラフは見事に一致している、ということがわかる。

 同様の比較は、日立製作所と東芝と三菱電機、NECと富士通と沖電気、などでも試験されており、結果を示したグラフを見ると、なるほど、企業間での差異は見られない。つまり、企業ごとの独自戦略というものは、そこには見られない。企業の成績を決定しているのは、業種全体の市況動向だけだということである。

 氏は一方で、グラフの動きが決定的に異なる例外的なケースも研究しており、ウシオ電機と岩崎電気などでは、企業戦略の違いが業績の違いを発生させていることを示してはいる。しかし、これはあくまで例外事例の指摘であって、著者の言いたいこととは、少しそれることになる。

 以上の内容を単純化すれば、「多くの場合において、企業は独自性のある戦略決定をすることは困難で、同業種の企業業績は基本的に似通ったものになる」ということになる。

 以上が前置きで、ここからが本題。

 こうした結論が統計的に実証されたとすると、ヘッジファンドの一つの投資手法である「ロング・ショート」の有効性は、どう考えればよいだろうか?ロング・ショートは、同一業種内で相対的に株価の高いものを売り、低いものを買うことで、市況全体=ベータの影響を最小限に抑える一方、企業ごとの業績変動によるリターン=アルファを獲得する手法で、安定的なリターンが得られる手法の一つとなっている。

 この本では売上高営業利益率の動きが一致する、と主張しているのであって、決して「株価の動きが一致」とは言っていない。しかし、企業業績は全てが正確に反映されるわけではないにしても、ある程度は業績の推移にリンクしていると考えるのが妥当だと思う。そうすると、ロング・ショート手法は、やはり有効である、ということになる。

 一方で、既に投資時点の株価には、一定の将来業績予想が織り込まれているのも、実態であろう。この本が指摘するように、基本的に一致するべき業績推移が今後は異なると市場に認識されているからこそ、その投資時点での株価には高い・低いが発生しているわけである。すると、現在の株価の格差は、この本で指摘しているところの「例外ケース」に該当することになり、ロング・ショートのポジションをとっていると、その差は永久に埋まらない、つまり、ロング・ショートは有効ではない、ということになる。

 この本を通じて、ロング・ショート手法の有効性について何らかの方向性が示せるのかと考えてみたが、結局、「よくわからない」という結論になってしまった。









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