IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
大泉製作所(6618 東証マザーズ)IPO |
現状では、想定公募価格の水準が妥当線か 足元の業績は堅調に推移し、増収増益を続けている。国内での半導体需要等が不透明な中でも、海外での事業展開を積極的に行っている点では、今後の業績低迷リスクも回避できるようにみえる。 13.3期業績予想ベースのEPS約43円に対して、想定されている公募価格のPERは約8倍となっており、業績は伸びているとはいえ製造業としてみた場合には妥当な価格水準と考えられる。更に、ベンチャーキャピタルからの出資が多い点では株式需給にやや不安なこともあり、この想定公募価格の水準よりも高く評価することは難しい。 連結データ(肩は対前期比(%))
大泉製作所グループは当社大泉製作所と連結子会社5社から構成され、主な事業として、熱・温度変化によって電気抵抗値が変化する半導体セラミックスのサーミスタを利用した各種電子部品(エレメント製品)の製造・販売と、それらを利用して、顧客である自動車部品メーカーや空調・家電メーカー等が最終製品に取り付けて温度測定や制御に利用できる温度センサ(センサ製品)を製造・販売している。 製品についての機能別特徴は以下。 1. 温度計測、温度制御 ・ 生活家電/エアコン、電子レンジ、IHクッキングヒータ、冷蔵庫、エコキュート、洗濯機 ・ 事務用機器/プリンター、コピー ・ 自動車部品/水温センサ、吸気温センサ、油温センサ、カーエアコン用センサ ・ 医療機器/電子体温計、各種計測機 ・ 工業産業機器/コンプレッサー、インバーター 2. 温度補償 ・ 情報産業機器/携帯電話、電池パック、PC、無線機 ・ 事務用機器/プリンター、コピー ・ AV機器/TV、モニター 3. 回路安定/事務用機器(プリンター、コピー)の電源部分、照明機器 4. 液面検知/自動車の燃料残量警告灯、食器洗浄器用水位センサ 5. 過負荷防止ヒーター/自動車のパワーウインド制御、電気蚊取り器 |
■11.3期 大泉製作所の主要顧客である自動車部品メーカーや空調機器・家電メーカーは新興国需要を積極的に取り込むことで概ね前年比増収となった。こうした需要動向を受けて、売上高は主に中国においてエアコン向けセンサの売り上げ増加があったことから、対前期比+8.9%の増収となり、営業利益以下の利益項目では、対前期比倍以上の大幅な増益となった。 表1 事業部門別の11.3期販売実績(百万円、前期比%) 11.3期 11.12期 自動車部品 5,983 -0.6% 4,131 エアコン冷蔵庫 -- -- 2,756 家電・カスタム部品 3,680 +25.8% 808 エレメント他 945 +18.5% 685 合 計 10,609 +8.9% 8,382
既存株主の保有株数のうち約半数がロックアップの対象となっている。ロックアップのカバー率としては、高いとは言えないものの、一部の発行済み株式に関しては、過去に実施された第三者割当等の株式受け渡しの際には、単価520〜700円と、想定されている公募価格を上回る価格で取引された実績もあり、一部株主にとっては売りたくても損失が実現することから売りにくい状況もある。 A. 発行済み株式数 5,377千株(単元100株) B. 公募 300千株、増資によるオーバーアロットメント なし C. 売出し 222千株(売出し元はベンチャーキャピタル220千株)、既発株のオーバーアロットメント なし D. ストックオプション等の残高総数 0株 E. うち潜在株式に算入する数 0株 F=A+B+E 上場時点の想定発行済み株式数 5,677千株 【参考】(株数は売り出し考慮前) ベンチャーキャピタルの推定保有株数 3,833千株 既存株主へのロックアップ情報: ベンチャーキャピタル2組合、法人2社と会社関係者8名に対して180日間。対象株数は約2,590千株。 目論見書での大泉製作所の想定発行価格は350円で、この価格に基づく公募による大泉製作所の手取り概算額は約90百万円とされている。資金使途は、在中国子会社での家電向けエアコン生産ライン増設のための生産設備構築資金に75百万円、国内の製造子会社での自動車用センサ生産ラインの増設のための生産設備構築資金に15百万円を充当する予定。
大泉製作所のウエブサイトには5月22日付けで投資家向け情報開示のページは設置されていない。上場承認のニュースリリースが掲載されている程度となっている。 |
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