2142ユー・エス・ジェイIPO=新規公開株式の上場目論見書に基づいた、銘柄・企業分析、初値予想・適正株価水準の想定
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ユー・エス・ジェイ(USJ:2142 マザーズ)IPO

公募価格バリュエーションと初値予想等

セクター:サービス業

上場を急ぎすぎでは
 経営再建し、07.3期はようやく黒字決算化が見えてきた状況になっている。努力は評価するが、土地賃借料の問題や、有利子負債の問題、売上高が伸びていない点など、様々な課題がまだ山積している状態。

 07.3期業績予想に基づくEPSでの、想定されている公募価格のPERは約100倍と、非常に高いバリュエーションになっている。テーマパークの人気や知名度、或いは株主優待(実施は未発表)目当てで取得すると、大変な代償を支払う可能性もあると考える。


個別データ(肩は対前期比(%))
決算期 05/3 06/3 06/9中 06/12 07/3予
売上高(百万円)
70,059
-2.6%
68,267

35,297

56,140
1.5%
69,300
営業利益(百万円)
73

1,494

3,300

7,321

--
経常利益(百万円)
-3,151

-582

2,387

5,988

2,450
当期利益(百万円)
-5,172

-4,634

1,398

4,883

1,000
総資産(百万円)
純資産(百万円)
152,054
8,308
142,833
28,674
123,167
30,073
126,357
33,557
--
--
株主資本比率(%) 5.5% 20.1% 24.4% -- --
ROA(%、経常利益)
ROE(%、当期利益)
--
--
--
--
1.9%
4.6%
--
--
--
--
発行済株式数 2,225.817 (修正後、千株)
EPS(円/株)
BPS(円/株)
--
3,733
--
12,882
628
13,511
--
--
449
--
配当(円/株) -- -- -- -- --

事業概要
テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営等
ユー・エス・ジェイは、01年3月に大阪市にオープンした、ハリウッド映画やキャラクターを中心としたテーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営と、それに直接関連して行われる各事業を展開している。

 テーマパーク運営等の事業収入は、運営収入と、商品販売収入、飲食販売収入、その他の収入に4区分される。

 運営収入には、テーマパークへの入場料、アトラクション優先入場券販売、駐車場使用料など、テーマパークでの全収入のうち、商品販売と飲食販売以外のもの全てを含んでいる。

 その他の収入では、マーケティング・パートナー企業からのパートナーシップフィーなどが計上されている。

株式の状況
ストックオプションとVC保有株には一応の考慮が必要か
 ストックオプションの未行使残高とロックアップ対象になっていないベンチャーキャピタルの保有株があるので、株式需給については、一応考慮しておく必要があると考える。ただ、筆頭株主の投資会社はロックアップ対象であり、またストックオプションの一部については行使期間に制限がついており、上場後すぐに全数を行使できないものがある。

A. 発行済み株式数 1,911,112株 A種優先株式185千株は自社で取得・消却済み
B. 公募 230,000株、増資によるオーバーアロットメント なし
C. 売出し 347,143株(売出し元は投資会社等227,143株、住友金属80千株、日立造船40千株)、うち国内予定数120千株、既発株のオーバーアロットメント 50千株(売り出し元は投資会社)
D. ストックオプション等の残高総数 84,705株
 E. うち潜在株式に算入する数 84,705株
F=A+B+E 上場時点の想定発行済み株式数 2,225,817株

【参考】(株数は売り出し考慮前)
ベンチャーキャピタルの推定保有株数 1,196千株
既存株主へのロックアップ情報: 投資会社等2社と大阪市に180日間。対象株数は1,366千株。

表2 ストックオプションの未行使残高の状況
総会決議  対象株数 行使価格 行使期間
06年6月 57,033株 22,500円 06年6月〜16年6月
06年6月 27,672株 22,500円 06年7月〜16年7月(行使制限期間あり)

 目論見書での想定発行価格は45千円で、この価格に基づく公募によるユー・エス・ジェイの手取り概算額は約9,469百万円とされている。資金使途は、2,574百万円をアトラクションの新設のための設備投資資金に充当し、残額を借入金返済に充当する予定。

 想定されている公募価格が45千円になっているが、05年8月に発行された優先株式も45千円で割当されている。この際の価格決定は、目論見書では「事業計画に基づくDCF方式により算出した価格に2を乗じた」方法とされている。

現在は、この時から1年半が経過したので、状況の変化と言えなくはないが、06年7月に付与されたストックオプションでも、「DCF法で計算して22,500円」となっており、この1年間では何も変わっていないことになる。その後の半年間で企業価値が倍増したということかもしれないが、最近にDCF法で計算した価格の2倍に公募価格を設定するというのは、疑問。

情報開示の状況
開示なし
 ユー・エス・ジェイのウエブサイトには2月14日時点で、投資家向け情報開示のページは設置されていない。参考になる資料・データとしては会社概要と電子広告程度となっている。
収支の状況
黒字化は立派だが、リスク要因が多く、利益率も低い
 06.3期は、営業施策として、韓国・台湾・香港に業務委託契約を締結した営業スタッフを配置し、各地域での認知度の向上や代理店・旅行会社への取り組みの活性化等による東南アジアからの集客を図り、海外からの入場者数は全体の約1割となった。

 その他にも、主要ターゲットグループを開業当初の若者層から女性層・子供連れのファミリー層に広げて、こうしたファミリー層等に親しまれ易いアトラクションやイベント等を実施し、集客拡大を図った。

 入場者数は、愛知万博の開催があったこと等によって、レギュラーパス利用入場者数は減少したものの、年間パス利用入場者数が増加し、通期では対前期比+約2%増の8,314千人となった。しかし、レギュラーパス利用入場者数と年間・期間限定パス利用入場者数の比率が変化したことによって、テーマパーク入場者一人当りの売上高は対前期比マイナス約5%の7,471円に減少。

 コスト削減策の実行によって、営業利益については、前期と比較して大幅に増加したものの、支払い利息の負担によって、経常損失を計上した。また、財務基板の改善のために、期中に優先株式の発行やシンジケートローンの再編、長期借入金の圧縮などのリファイナンスを行ったが、これに関連する費用など約4,046百万円を特別損失に計上した。このため、最終的には当期赤字の決算となった。

 06.9中間期、重点開拓地域としている関西周辺圏で集客のための広告宣伝活動を強化し、交通機関・旅行会社とのタイアップによる集客なども行った。中間期での入場者数は3,963千人、テーマパーク入場者一人当りの売上高は8,215円となった。以上の結果、中間期段階では、開業初年度以来始めての中間純利益の計上となった。

表1 収入区分別の販売実績(百万円、前期比%)
        06.3期   06.9中
運営    33,187 -1.7% 17,909
商品販売 18,168 -4.1%  9,098
飲食販売 10,759 -5.2%  5,548
その他   6,152 +2.3%  2,740
合計   68,267 -2.6%  35,297

表2 入場者数の推移(千人)
           06.3期   06.9中
レギュラーパス 5,713 -6.9%  2,892
年間パス    2,600 +32.6%  1,070
合計       8,314 +2.6%  3,963

 季節変動要因としては、冬季にあたる第四四半期は入場者数が低水準に留まる傾向にある。更に、春休みの集客増加を図るための広告宣伝費や一部のアトラクション設備を臨時休止して行う大規模メンテナンス費用、春休みに合わせて投入するアトラクション・ショーの制作費用などの費用が増加する傾向にある。このため、第四四半期は営業損失を計上する傾向にある。また、上期・下期で区分しても、下期の利益幅は上期に比較して小さくなる傾向にある。

 07.3期業績予想では、売上高は中間期のほぼ倍で見込まれる一方、利益項目では中間実績を下回る見通しとなっているが、こうした要因によるものと考えられる。過年度と比較すれば、黒字決算になりそうなだけでも立派とも言える。

 しかし、今期の業績予想でも売上高経常利益率は約3%程度に留まり、利益が出る構造になっているとはいえない。更に以下に列挙するように、様々な事業リスクが存在する。会社側が主張するようにEBITDAの推移を見れば順調だし、今後もある程度の黒字決算は出来るようになるのではないかとの希望的な観測はするが、リスク項目の多さと根本的な利益率の低さが課題として残っている。

 ユー・エス・ジェイでは、過去5期連続で当期純損失を計上したために、当期未処理損失が06.3末時点で約363億円残っていた。この損失は06.9末に資本準備金と資本金の額を減少することで、BS上は対応がされている。ただし、税務上の繰越欠損金は約189百万円残っている。

 有利子負債に関するリスクも多く残っている。有利子負債残高は06.9末で約724億円と、総資産約1,231億円に対するウエイトは、約6割程度になっている。これ自体は特別に有利子負債依存度が高いというほどでもないが、営業活動によるキャッシュフローの金額の半分を超える額の返済が毎年必要になる可能性があることが、目論見書では指摘されている。

 また、借入金債務の約半分を超える484億円は変動金利での調達となっており、今後金利が上昇した場合のリスク要因となる。更に、変動金利の一部については金利スワップによるヘッジを行っているが、06.3期にはヘッジ会計終了損として約9億円を計上している。

 事業用地は、大阪市と民間6社から賃借している。大阪市に対する賃料については、09.3期以降に増額されることが決定している。民間からの分については逆に、09.3期以降5ヵ年分の賃借料を減額する取り決めになっており、将来の費用増加要因となる。また、事業用地の全てが土地区画整理事業の対象となっており、換地処分後も賃借権は残るものの、ユー・エス・ジェイに対しては、約6億円の精算金支払い債務が課される予定になっている。



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