IPO初値分析・株式投資〜Hephaistos Investment Research |
出光興産(5019 東証)IPO |
取り立てて特徴の無い大規模上場案件 原油価格68ドル/バレル(ドバイFOB)を前提とした07.3期の会社発表業績見通しベースでは、EPS750円であり、想定されている公募価格のPERは約13倍となる。 事業としての成長性や、前提としている原油価格が今となっては若干高めであること、グローバルオファリングを含んだ大規模な上場案件であること、を考慮すると、順当な公募価格設定になるだろう。 公募割れの水準で価格が推移することも考えにくい一方、株価が高騰する可能性も低いとみる。 連結データ(肩は対前期比(%))
出光興産グループは、当社出光興産と子会社94社・関連会社34社から構成されており、事業の種類別セグメントと、それに対応する主な事業内容は以下の通り。 ■石油製品 石油製品の輸入、精製、販売。原油・石油製品の輸送・貯蔵。LPガスの輸入・販売。石油製品の販売。 ■石油化学製品 石油化学製品の製造・販売 ■石油開発 石油資源の調査、開発、販売。 ■その他 石炭の調査、探鉱、開発、販売。ウランの調査、探鉱、開発。地熱資源の調査、探鉱、開発、販売。電子材料の製造・販売。自動車関連商品の販売、リース業等。保険代理店業。クレジットカード業。
出光興産のウエブサイトには9月26日時点で、投資家向け情報開示のページは設置されていない。上場承認についてのニュースリリースが出されているだけで、それ以外に参考になる資料とコンテンツとしては、会社情報ぐらいしかない。会社規模からして、やや心もとない開示状況にある。 |
06.3期の業績は、原油価格の上昇などによって前期比+約20%の増収となったものの、原油価格の上昇分を卸価格に十分に転嫁できなかったことなどから、営業利益では前期比-約28%の減益となった。 石油製品部門では、ガソリンは前期並みの販売、ジェット燃料とナフサではそれぞれ、航空輸送と石油化学需要が堅調だったことで増加、灯油は昨年末の寒波の影響によって販売が前期と比較して増加した。一方、軽油はディーゼル車の台数減少、産業用A重油・C重油は価格上昇に伴って他エネルギーへの転換が進んだことなどで販売が減少し、石油製品全体では前期並みの販売数量となった。結果としては、原油価格が上昇したことでの価格上昇分だけ、増収となった形になる。 石油化学製品部門では、ナフサが前期と比較して約20%価格が上昇したものの、中国をはじめとするアジア市場での需要が好調であった。また、ポリカーボネートを中心にOA・IT機器などの工業材料分野の需要が好調であったこと、樹脂加工製品で製品価格の改定によって原料価格の上昇分をほぼ吸収することが出来たことなどもあって、部門全体では、前期比+約15%の増収となった。 石油開発部門では、原油価格が高騰したことは収益に貢献したものの、一部鉱区での生産停止の影響によって原油生産量が前期と比較して減少したことから、前期と比較して若干の減収減益となった。 その他部門では、石炭、ウラン、電子材料、透明電極材料等で、前期と比較して増収増益。 表1 事業の種類別セグメントの利益状況(百万円、%) 石油製品 石油化学製品 石油開発 その他 連結 05.3売上高 2,083,645 477,671 72,776 129,574 2,763,668 05.3営業利益 21,823 30,542 37,885 9,097 99,382 05.3利益率 1.0% 6.4% 52.1% 7.0% 3.6% 06.3売上高 2,552,545 550,744 71,445 152,667 3,327,403 06.3営業利益 -9,039 32,152 36,954 11,312 71,432 06.3利益率 -- 5.8% 51.7% 7.4% 2.1% * 外部顧客に対する売上高 05.3期に当期損失を計上しているのは、閉鎖した製油所や油槽所、不採算SSの遊休土地を主に対象とした減損損失の計上約500億円によるもの。減損については、06.3期も引き続いて特別損失に計上しているが、金額的には約77億円と小規模であり、特別利益の計上で部分的に相殺されており、収支に対して大きな影響は与えていない。 07.3期見通しでは、原油価格68ドル、為替レート115円を前提として、前期と比較して若干の増収増益を見込んでいる。第一四半期の進捗率では、通期見通しの達成に向けてインラインという状況。現状の原油価格の情勢が持続すれば、ほぼ見通し通りに着地すると思われる。足元の原油価格は低下傾向にあるので、このまま価格が低下した場合には、今期の見通しはやや強気となる。 出光興産が1995〜98年に防衛庁と締結したガソリン・灯油等の販売契約が、談合に基づく無効な契約であることを理由として、防衛庁から、出光興産が受領した販売代金の一部である781百万円等について不当利得返還請求訴訟を起こされている。この金額については、将来的なコスト増要因となる可能性がある。 また、この件に関連して、出光興産は公正取引委員会から排除勧告を受けており、この課徴金681百万円については支払い済みとなっている。更に続いて、2001年に公正取引委員会からポリプロピレンの販売価格に関して、競争を実質的に制限したとして排除勧告を受け、現在審判中となっている。
出光興産の06年6月時点の発行済み株式数は27,321,500株(取引単位は100株)で、上場にあたっての公募が11,521千株(うち7,721千株が国内、3,800千株は海外募集)、オーバーアロットメントによる売り出しが1,157,500株予定されている。オーバーアロットメント分については、主幹事である大和証券SMBCを引受け先とした第三者割当増資となる可能性がある。ストックオプションの未行使残高はない。以上から、上場時点の想定発行済み株式数は40百万株とした。 目論見書での想定発行価格は9,500円で、この価格に基づく出光興産の国内公募による手取り概算額は、約73,026百万円とされている。海外公募分で約35,806百万円、第三者割当増資の上限約10,953百万円とあわせて、将来の事業拡大のための戦略投資と既存設備の維持更新投資等に充当する予定。 ベンチャーキャピタルの保有株式は、株主名簿では357,100株で、全体に占めるウエイトは小さい。その他の株主では取引先法人や金融機関等が多く、既に安定株主対策は非上場段階での第三者割当増資によって、周到に準備されている。 既存の大株主である法人1社、2財団、幹事証券会社2社に対しては180日間のロックアップが付されている。ロックアップの対象となる株式数は約11,900千株、発行済み株式数に対するウエイトは3割程度となる。 |
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本資料における個別銘柄に関する注意事項 EPS・BPS・株主資本比率の計算の元となる、純資産・総資産・株主資本は、各決算期末時点の会社公表数値を用いている。発行済株式数は、自己保有株を含まない。また、株式分割・公募増資・自己株買い入れ等を必要に応じて過年度を含めて修正している場合がある。 一株当りの配当は、株式分割・公募増資・自己株買い入れ等を必要に応じて過年度を含めて修正している場合がある。 その他の重要な注意事項 本資料は、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特定の投資目的、または要望を考慮しているものではありません。投資対象となる有価証券の価値や投資から得られる収入は、証券価格の変動のほか、発行体の経営・財務状況の変化、金利や為替相場の変動やその他の要因によって変化する可能性があり、投資額を下回る場合があります。また過去の実績は必ずしも将来の成果を示唆するものではありません。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。 本資料は、当サイトが信頼できると判断した情報源からの情報に基づいて作成されたものですが、その情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、本資料に記された意見や予測等は、資料作成時点での当サイトの判断であり、今後予告なしに変更されることがあります。本資料の著作権は当サイトに帰属し、その目的のいかんを問わず無断で本資料を複写・複製・配布することを禁じます。 |
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